万国博覧会(万博)とは、政府が国を挙げて開催する国事であり、世界最大の文化祭典です。
万博には、5年おきに総合的なテーマを掲げて開催される登録博覧会(登録博)と、2つの登録博の間の期間に専門的なテーマを掲げて開催される認定博覧会(認定博)の2種類があります。
2025年4月13日より開幕する大阪・関西万博は、20年ぶりに日本で開催される登録博です。
テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。
世界の人々の新たなアイデアを創造・発信する場所が大阪・夢洲に誕生します。
クラップ・ネットワークは、2005年愛・地球博から、登録博・認定博の両方で、
運営および企画等で業務に携わっています
クラップ・ネットワークが、これまでに携わった5つの万博で、業務を担当した7人に、インタビューを行いました。
アテンダント、管理マネージャー、運営企画制作…様々な立場から見て、感じた「万博」とは??
01INTERVIEW
アテンダントとして、パビリオン内ツアーを担当すると共に、VIP接遇アテンダントとしてVIPの方々がいらっしゃった際に展示説明等のご案内を行いました。
家族ぐるみでお世話になっている、大学の先輩のお母様に紹介してもらったのがきっかけでした。(なんでも、ドバイ旅行の帰りの便で隣の席に座っていた男性と話していると「僕の親友が日本館を作っている。もし興味のありそうなお知り合いがいればぜひ」とのことだったそうです。)
元々CA志望で、英語も学んできたためドバイのエミレーツ航空にも憧れがありました。
加えて当時はコロナ禍真っ只中でCA採用は中止、海外で働く機会も全くない状況でしたので「ドバイだし、受けるだけ受けてみよう」とエントリーしたのがきっかけです。
今となっては楽しかったことばかりが思い出されて、あまり覚えていませんが、最も大変だったのはやはり接客だったと思います。
コロナ禍という特殊な状況下で、英語を使って海外のお客様の対応をしなければなりません。また、日本館は他のパビリオンに比べても一際人気が高く、ツアー人数に限りもあったため、240分待ちになったこともありました。当然お客様は、どうしてそんなに待たなければならないのだろうと疑問に思います。そういった説明を、英語で分かりやすく伝えることは本当に大変でした。ガッカリした顔をして帰っていかれるお客様を見る瞬間が、一番辛かったように思います。
全てが楽しかったです。
仕事中も、プライベートで仲間と過ごす時間も、とても充実していました。
やりがいを感じた瞬間は、日本館を体験したお客様に「最高だった!ありがとう」と笑顔で言っていただけた時です。ハプニングや失敗、クレーム対応もたくさんあり、思わず泣いてしまったこともありますが、お客様の「楽しかった」の一言で、今日も一日頑張って良かった!という気持ちにさせてもらえました。
VIP接遇はツアーとは全く違う緊張感がありました。VIPで来館する他国の方々は、お仕事の一環で外交としていらっしゃる場合も多く、接遇も細心の注意を払う必要があるほか、帯同中はお客様に展示内容を説明しながら、同時に周囲を観察して、一般のお客様との距離感などにも注意を払う必要がありました。普段以上の集中力と丁寧さが求められる業務だったと思います。そしてなにより、どんなに慌てていても、どんなハプニングが起きても、それをお客様に悟られないよう、「落ち着き」を意識していたように思います。
02INTERVIEW
アテンダントとして、パビリオン内外でのお客様の誘導、展示の説明補助を行いました。
大きく2つのきっかけがあります。
①日本館のビジョンで「アイディアの出会い」の場として日本館を捉えている眼差しに深く共感したからです。 日本は大陸から離れた島国でありながら、古来より多くの文化交流を大切にし、独自の文化を築き上げてきたという歴史があり、そうしたことを海外にアピールする一翼を担えることはめったにない機会だと考えました。
②アテンダントの活動は将来にとって必要な知識やスキルを涵養する絶好の機会となると考えたからです。また、従来の募集があった時期は受験に没頭していたため万博の存在すら知らなかったのですが、幸か不幸か、コロナ禍となり万博が延期され再募集がなされたことも重要なきっかけの1つとなりました。
コロナ禍での開催ということで、万博主催者側の規制、日本館の規制が微妙に異なり、日本館の規制が厳しめであることについて説明することが大変でした。
また、これまで接客や外からの見え方について深く考える機会がなかったので、基本的な接遇マナーを身につけることに苦労しました。
人気館だったため、来場者からすると予約が非常に困難だったと思います。
その倍率を潜り抜けて来場されたこともあるのか、お客様の満足度が非常に高く、一つ一つの回が達成感のあるものだったことです。
(業務外の時間も感染にはヒヤヒヤしながらも楽しみました)。
海外旅行中にロシアがウクライナに侵攻し、祖国に帰れなくなった、日本語勉強中のロシア人男性が、たまたま自分の担当する回のツアーに参加されて、事情を聞くうちに、なんともしがたい気になりました。この方とは今でも東南アジアで数回会っています。
ロシアのウクライナ侵攻が万博期間中に始まり、ウクライナの国旗を掲げるなど「連帯」を表明する館が欧州を中心に見られたこと、イスラエルとパレスチナのパビリオンは隣り合わせだったこと…など国際政治専攻の私にとって興味深いことはたくさんありました。
(Coldplayのボーカルが来られたのも忘れられません)
アテンダントの同僚の中にも、CAなど接遇マナーのプロがたくさんいらっしゃったので、一つひとつの動作から多くのことを学びました。
コロナに対しては、世界の標準とは違っても、真面目に(たまに不器用に)対応する日本の姿は、まさに日本のあるべき姿勢を体現していると常々思っていました。
03INTERVIEW
マネージャーという立場で、主にアテンダントの労務管理と生活サポートを行っていました。
また、万博開幕前のアテンダントの研修では勤怠や労務、その他アテンダントの勤務や現地での生活に関わるオリエンテーション等を中心となって実施しました。
アテンダントは、「お互いに初めて会うメンバーが、海外の慣れない土地で、長期に渡って共同生活を送る」という環境にいました。そのような中で、人間関係や現地の生活環境でのトラブルなど、業務面でのサポート以上に、生活面のサポートをしていくことが、大変でした。
長期間共に過ごす中で、アテンダントとの信頼関係が築けたと感じた時や、アテンダント自身が成長して、それぞれの持ち場で十分なパフォーマンスを発揮できていると感じた時はとても嬉しく、やりがいを感じました。
研修期間中、深夜2時にアテンダントの一人が部屋へ訪ねてきて、悩み事を聞いたことがありました。 自分も寝ていたのに、このとき、よく部屋のチャイムに気が付いたなと今でも不思議に思いますが、気が付けて本当に良かったと思っています。
人と信頼関係を作っていく、人同士がお互いに仲良くなっていくために、どんなことが必要なのかを感じる機会になり、この点が大きな学びです。
一番は、生活面も含めた長期サポートが必要となることと、長期だからこそ、ただ業務をこなすだけではなく、一人一人のモチベーションが下がらないような取り組みを考える必要が出てくることが、通常の単発イベントとは異なる点かと思います。
万博は、他の多くのイベントとは違い、ある一定期間の間に、研修、勤務、人間関係において密度の高い体験ができます。 私は、海外での万博経験しかありませんが、日本開催であることで、生活面での不安が少ない中、研修を含め、業務経験としては、一般的なアルバイトよりも密度が高く、多くの経験値を得られる良い機会になると思います。
04INTERVIEW
事前制作業務の運営部分の担当として、その他のセクションと連動しながら、パビリオン運営に関わる部分の計画に携わりました。
万博は1つのパビリオンが完成し、実際にオープンするまでに、非常に多くの関係者が様々な立場で関わります。何年も前から企画などの準備を進めるわけですが、運営は建築や展示の細かな内容も把握する必要があるため、たくさんの打合せに参加し、議論を繰り返した点は、やりがいがあると同時に、大変だったことだと言えます。
議論を重ねる中で、少しずつ全てが形となっていく経過を見ていると、苦労が報われる想いがします。そういった点はやりがいを感じる1つでもあります。
社会に出て様々な業種・職種がある中で、万博業務は明確なゴールがあるため、大きな達成感を得られることは、社会に出て『働く』という意味では、とてもやりがいを感じることとなります。
万博は世界各国の方が集い、国際的な体験ができる場だと思います。近年は海外開催が続いていましたが、愛知万博以来、久々の日本開催ということで、日本にいながら、国際的な体験ができるという点においては、とても貴重なチャンスが身近にあると考えます。
また、長い期間・時間を一緒に過ごすことになるので、チームメンバーとは万博終了後も続く大切な絆が出来ます。
05INTERVIEW
主に日本国内での作業になるのですが、関係者が搭乗するエアーの手配・調整や、現場(上海)滞在中の宿舎管理(部屋ごとの滞在スケジュール調整ほか)・宿舎管理会社との調整・清掃手配など清掃会社との調整を行っていました。
長期に渡る本番期間のため、現地と日本を往復するスタッフもいました。別件の国内作業でも活躍するスタッフたちのスケジュール確認・調整は渡航ギリギリまで続き、なかなかスリルのある作業でしたが、ビシッと決まった時の爽快感もありました。
万博期間中は、土日も関係なくスタッフが動いていたので、手配・調整業務で週末や深夜に担当者の方とお話しする必要もあり、連絡が大変でしたが、苦労を共にしたおかげで、今でも取引が続く良い関係性を築くことが出来ました。
私の作業は国内で粛々と行うものなので、はっきり言って地味です。しかしながら、現地の様子はもちろん日々起こるトラブルや感動体験・面白話なども聞いて、現地にいるかのような気持ちになっていました。
そんな情報は実はスタッフスケジュール調整や部屋割りにもとても重要で、遠く離れた現場での運営に少しでも寄与できていることは嬉しく思いました。
06INTERVIEW
来賓接遇アテンダントとして、VIPの方々への接遇等を担当していました。
自分が生きている間に万博で働く機会はこの時しかない!と思い応募しました。
勤めた会社を退職することは勇気がいりましたが、「何かに挑戦するときに、遅すぎることはない」という言葉に後押しされ応募しました。
観客アテンダントを希望していたのですが、これまでの経験のためか来賓接遇アテンダントに配属となり、最初はモチベーションが下がってしまい大変でした。でも、講師の先生や周りのアテンダントと一緒に研修に取り組むなかで、少しずつですが気持ちを切り替えていくことができました。
一番楽しかったことは、たくさんの仲間ができたことです。毎日のショーを無事に、そして、お客様に楽しんでいただくという、当たり前だけれど大切な目標に向かいみんなで協力しあったことは良い思い出です。
20年近くたったいまでも大切な友達として交流が続いています。また、仕事終わりに各国のパビリオンに行きおいしいごはんを食べたことも楽しかったです。特にベルギー館のビールは最高でした。
ショーが始まる前、アテンダント全員が手話で観覧のご案内をしているのをご覧になった耳の不自由なお客様(おじいちゃんとお孫さん)が、ものすごく目を輝かせて「感動しました!」と手話で伝えてくださったことです。人に感動してもらうということはこういうことなのかと実感した瞬間でした。今でも、このご案内の手話は覚えています。
プロトコール(国際儀礼)の研修をしっかりと受けさせていただきましたので、必要以上に緊張せず自信を持って対応することを意識しました。また、来賓の方はお忙しいスケジュールを縫ってご来館いただいていたので、時間を計算して事前の打ち合わせをしっかりと行なっていました。 小さなミスはありましたが、そのままにせず、チームで話し合い次回の接遇に活かすように心がけていました。 おかげで、大きなミスなく最終日を迎えることができました。
毎日、少しずつでもより良くしようとする気持ちの大切さに気付かされました。アテンダントだけでなく運営チームの皆さんが少しでもお客様に喜んでもらえるよう、お客様に負担がかからないように様々な取り組みをされている姿勢から多くのことを学ばせていただきました。
同僚の相談に乗る中で、人を励まし明るく前向きな気持ちになってもらうことに、喜びを感じることに気づきました。結婚後、大学生の就職活動支援に長く携わり国家資格キャリアコンサルタントの資格も取得しました。
万博で働くことは一生に一度あるかないかのチャンスです。苦しいこともあると思いますが、これまでの人生では得られない人とのつながりや、たくさんの気づきを得て成長できる素晴らしい機会だと思います。愛・地球博が開催された20年前より多様性が認められるようになった現代で多くの方に躊躇せず挑戦してほしいです。
07INTERVIEW
来賓接遇アテンダントとして、VIPの方々への接遇等を担当していました。
地元愛知県での開催、一生に一度しか経験できないと思い応募させていただきました。
研修で覚えることがたくさんあって、とても大変でした。また、会期後半は電車が混み合い通勤に時間がかかり苦労しました。
接遇マナーを身につけられたこと、普段を出会うことがないVIPの方々にお会いできたこと 、かけがいのない仲間に出会えたこと、仕事帰りにアテンダント仲間と会場内を見て回れたことも楽しかったです。
万博でのお仕事が初めてでしたので日々楽しく色々なことが新鮮でした。
皇室の方や世界各国のVIPにお会いできたことは、とても印象深く残っています。
ミスがないよう細心の注意を払い、仲間とのチームワークを大切にしました。
仲間やマネージャー、関係者の方とコミュニケーションを取ることの大切さを改めて感じたほか、初めてプロトコールを学べたことは大きな学びです。
次はいつ日本開催になるか分かりません。一生の思い出と良い経験にもなりますので少しでもやってみたいと思う気持ちがあったら挑戦してほしいと思います。 研修もしっかりとあるので安心でした。